福岡高等裁判所 昭和24年(つ)226号 判決 1949年12月17日
被告人
三宅喜代市
外二名
主文
原判決を破棄する。
被告人三名を各懲役三月に処する。
但各被告人に対し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
原審の訴訟費用は被告人等の負擔とする。
理由
弁護人山中伊佐男の控訴の趣意は別紙の通りである。
原判決を精読すると原審は檢察官作成の各被告人の供述調書中判示同趣旨の供述記載即ち被告人等の自白を主要証拠とし各被告人が本件密造の日時に接続する昭和二十三年九月、十月の間各密造石数と同量の燒酎を竹下精に対し販賣した事実を右自白の補強証拠として起訴事実を認定したものであり同判決に挙示の処刑の事実、証人竹下精の証言檢証第一、二号の記載の如きは右補強証拠たる事実の認定資料として使用されているに過ないことを看取し得る。
而して本件公訴の対象即ち罪となるべき事実は飽く迄も燒酎の無免許釀造そのものでありその販賣行爲との間には法律上何等の関係のないこと洵に論旨に言う通りであるがさればとてこの峻別は裁判所が被告人の自白している密造石数と同量の燒酎を密造の日時に接続する日時において釀造の免許等を有しない一般農家である被告人等が他に販賣した事実を確定し之を被告人等の自白(燒酎無免許釀造に付いて)の確実性を裏付する補強資料に供することをも峻拒する理由とはならない。即ち或犯罪事実に対する自白の補強証拠となり得る爲にはその自白の確実性乃至眞実性を合理的に裏付し得るものであれば足り常に必ずしも直接その犯罪の罪体に関するものであることを要せぬと解すべきである。然らば原審が被告人等の前示自白とその裏付として合理性を有すると認められる前顯資料とを綜合して有罪の認定をしたのは正当であつてこの点の論旨は理由がない。
(註) 本件は、量刑不当にて破棄自判。